まっつのブログって名前、氾濫しすぎだろ!

いまだ「男の子」を抜け出せない大学生のブログ。

いつでもどこでも/Slowdive『Slowdive』

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 鳴っているのに鳴っていない音楽は確かにある。それはアンビエントなんて呼び方をされることもある。新しく音が鳴る=違和感以外の何物でもないワケで、何らかの感覚を呼び起こして然るべきだ。しかし、そうならない音楽の存在もまた同様に確からしい。

 2014年に再結成を果たしたバンドの22年ぶりの新作。解散後も評価が高まり、今作はバンド史上最高位である全英16位、全米50位をマークしている。

 シューゲイザー。ノイズとエコーがかかった甘いメロディを持つ音楽の名であり、Slowdiveに冠されたジャンルの名でもある。その特徴からして主張しないように努める音楽ではないし、本作のどの音を聴いてみても投げやりな感じはしない。これまでの作品より丁寧に爪弾かれるリードギターも、背後でうっすらと、だが確かに鳴るバッキングのフィードバック・ノイズもそれ自体はとても尖ったものだし、丁寧に鳴らされている。しかし本作のバランスはどうだ。周囲がどんな環境でもネガティヴな干渉を一切しない溶け込み方はなんだ。ただの環境音とも違う、しっかりと実像を持ちながらもフィールドを限定しないバランス。桃源郷でも奈落でもそこらの街角でもいいが、本作は確かに「風景」を描いている。


 

  

試されている/集団行動『集団行動』

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 元・相対性理論の真部脩一と西浦謙助が、ミスiD2016ファイナリストの齋藤里菜をボーカルに据えてスタートさせたバンドの1stフルアルバム。3人体制で活動を続けていくワケではないようで、現在も追加メンバーを募集している。

 最初から顔を出し積極的にインタビューに応じるそのスタンスこそ、真部・西浦在籍時の相対性理論と集団行動との1番の違いだ。なぜそうするかと言えば、この社会に自分たちの音楽をちゃんと届かせるためだ。そう考えるとバンド名もジャケットも示唆的だし、メジャーデビューだってその目的を果たすための布石なんじゃなかろうか。

 記名性を明確に打ち出す活動方針は音楽面でも打ち出されている。パッと聴いた限りではかつての相対性理論と変わらないような気もするのだが、こちらでは各プレイヤーのエゴがよく見えるようになった。特に印象的なのが真部のギター。M2のイントロのメロコア感ある力任せなリフやM7のスケールの大きい流麗なソロから覗くのは、箱庭を飛び出し地に足を着けた1人の人間だ。齋藤のボーカルも「普通の人らしさ」全開な歌唱力と声色で、聴き手に親近感を与えている。些細だが決定的なこの変化、かつてのリスナーに対する踏み絵として機能するかも。


 

  

時流と特質の幸福ながっぷり四つ/UVERworld『TYCOON』

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  2017年に入ってから衝撃を受けたトピックの1つに、Drake『More Life』の存在がある。アルバムっぽく見える楽曲集を「プレイリスト」と位置付けていたからだ。なるほど、統一感のなさ故に「アルバム」とは言わなかったのだと聴けばわかる。確かに客演ミュージシャンがメインの楽曲が多く、ジャンルもトロピカル・ハウス、グライム、トラップなどトレンドを幅広く取り入れていた。しかしとにかく、1ミュージシャンの楽曲集が「プレイリスト」と呼ばれること自体に驚いた。ただ、楽曲間の節操のなさにはなんとも思わなかった。この感じを自分はよく知っている。

 ところで、UVERworldというバンドは新しいものが好きだ。3D技術を用いたMV、ダブルラインアレイスピーカー、ザイロバンド。これらは全て、彼らが日本で初めて導入したものだ。彼らはその時々の最新技術をいち早く持ち込み、表現活動に広がりを持たせてきた。その節操のなさが注目を集めたことは間違いない。また、楽曲に関してもごった煮感は顕著で、特に凄かったのは前々作『THE ONE』。トライバルなリズムを導入したり、およそバンドでは使用しない楽器(リコーダー!)を持ち込んだりしたことで曲のレンジを以前とは比べ物にならないほど広げた。さきほど筆者が「この感じを自分はよく知っている」と書いたのはこのため。しかし、時流とのシンクロ率は高くなかった。あくまでUVERworldの音楽の根底にはパンクやミクスチャーなどの「バンド音楽」があり、そこから外れることはなかったからだ。

 では『TYCOON』はどうか。今作は、1枚の中に様々な音楽ジャンルを取り入れる海外の風潮とUVERworldが元々持っているミーハー気質が、音楽面で初めて合致した作品だ。今まではバンド音楽の上に異なる要素を乗せていたが、今作は非バンド音楽をバンドで鳴らす、という方向にシフトしている。楽曲のバラエティさは今も昔も変わらないが、EDMやR&B、ヒップホップなどの非バンド音楽に意識的に取り組むことで、バラエティさが世界のそれと同質になった。白眉はM4〜M5。揺らぎのあるビートにはアンビエント、よく通る裏声と伸びやかなメロディには直近の宇多田ヒカルの影が見えるM4。拍を強調したR&Bなリズムにフュージョン的なベースが乗るM5。前作から3年という期間を経て、バンド音楽や「邦ロック」と向き合うだけでは生まれなかったであろう要素が数多く花開いている。

 彼らがここまで海の向こうの音楽を取り入れたことは今までなかった。従ってディスコグラフィ上、変化球な作品ではあるだろう。だがその結果『TYCOON』は2017年的な、あまりに2017年的なアルバムになった。ミーハーな彼らのことだ、今の方向性が維持されるかはわからない。ただ今は、世界の流れとバンドの気質がしっかり手を結んだ、その事実を祝福したい。あえて言おう、今こそUVERworldの時代であると。

 

  

ロックバンドの意地/hyukoh『23』

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 韓国はソウルのホンデ地方出身の4ピースバンド。今作が1stフルアルバム。過去の2枚のEPに見られた煙たい音像やドラマ主題歌「Masitnonsoul」での手数の多い性急なビートは本作では封印。各楽器の音の粒立ちを強調しゆったりめのBPMの楽曲を多く配することで、スタジアムロックと呼んでも差し支えない位に見通しのよいアルバムを完成させた。

 「韓国のSuchmos」と称されることが度々ある彼ら。確かに両者とも「ロックバンドである」ことに強いアイデンティティを見出してはいる。しかし、ジャンルとフォーマットのどちらに重きを置くか?という問いへの答えは異なるのではないだろうか。Suchmosがジャンルの内部でロックバンドというフォーマットを操るのに対し、hyukohはフォーマットの中にジャンルを取り込んでいる印象だ。ファンクやソウル、ジャズなど様々な要素を含みつつも清涼感あるアレンジで統一させているあたりに「鳴らしたい音をロックバンドで鳴らしきる」という気概が伺える。そう考えたとき、自分の頭の中に浮かんだ日本のバンドはSuchmosではなく、『光源』以前のBase Ball Bearだったりしたんですけどどうなんでしょう。


 

 

楽園なんかじゃなかった/Strongboy『Steady』

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 カナダはノバスコシア州ハリファックスにて結成された4ピースバンドの1stフルアルバム。これまでの音源はBandcampでの配信のみだったが、今作は各種ストリーミングサービスの他、カセットでのリリースもされている。

 タイトル曲「Steady」のシングルリリースからきっかり1年を置いての今作だが、路線は今までとほぼ同じである。ほんのちょっとキラキラしたギターにリバーブがまぶされた陽性の音色。ハリファックスの夕暮れ時の港が目に浮かぶチルアウトミュージック。しかし、今作ラストのM8でそれまでのイメージがひっくり返される。

 雪崩れるギターノイズで始まるイントロ。コーラスで曲タイトルが連呼されるその後ろでも絶えず続く、足下が割れ崩れるような不協和音。微睡むような景色はどこへやら、どこからがアウトロなのかもわからない。気づけば全楽器が一気呵成になって、ノイズの流れを早めていく。約7分もの嵐。それが少し収まった後に立ち現れるのは、M1のリフレインだ。円環構造。慌てて聴き直すと不穏さがはっきり顔を出しているのがわかる。丁寧に積み上げたものをラストでぶっ壊し、2周目以降の聴き方を変えてしまう。アルバムだからこそできる芸当をやりきった快作。

 


 

  

「気持ちが良すぎて、気持ちが悪い」/Cigarettes After Sex『Cigarettes After Sex』

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 米テキサス州にて結成された4ピースバンドの1stフルアルバム。昨年、突如として2012年リリースの『EP Ⅰ』収録曲がインターネット上で大きな話題になった。しかし、これからますます注目を集めていくであろうバンドにしては把握できる情報が少なく、インタビューも数えるほどならMVも作られていないという状況である。聴き手の知的欲求を煙に巻くスタンスと呼応するように、楽曲のほうも霧の中で1人空気と戯れるがごときつかみどころのないサウンドとなっている。全編通した特徴としては、ゆったりしたBPM、リバーブがかかったギター、音数の少ないアンサンブルが挙げられる。ドリームポップとサッドコアの合いの子と言えばいいだろうか。

 霞を食わんとする朧気な音像ではあるが、曲中の主人公は同じである。それは、かつてのガールフレンドを回想する1人の男だ。僕があの子にしたこととあの子に僕がされたことが徹底して過去形で描かれる。他者も社会も未来も存在しない過去の中で、2人は自分らだけの幸せな日々を過ごし続けるのだ。

 甘い過去をねぶり倒す孤独はとんでもなく幸せで、聴いている間はただ思い出に浸っていられる。もっとも、終わった後に残るのは虚無だけだったりもするが。


 

  

それでも生きてゆくということ/RHYMESTER『ダンサブル』

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 ダンスミュージックとは?と聞かれたら、自分なら「反復」と答える。ある展開が繰り返し別の展開に進む、あるいは終わる。今作はダンスミュージックやヒップホップが持つ「反復」というテーマを最大限に活かして、日常の中にあるささやかな希望や失敗を描写する、基本的には楽しいアルバムだ。しかしふっと、そのテーマの恐ろしさが顔を出す。

 「反復」は「次に進まない」と同義だ。アルバムラストのM10でのカウントダウンにそれが顕著に現れている。何度も秒読みを繰り返しながら、しかしカウントがゼロになることはない。望んだ瞬間が訪れるのかどうかはわからないまま、このアルバムは終わる。かつて描いた夢物語などかすりもしないまま、人生は終わっていくかもしれない。寝ても覚めても見た景色を目の前に映すことなど、どだい無理な話なのかもしれない。

 それでも。それでも、夢見た未来に向かって繰り返し手を伸ばす。誰のものでもないあなたが踏みしめたその軌跡は、何よりも尊いものなのだ。文字に起こしてしまえばとんでもなく陳腐なメッセージだが、間もなく結成30周年、泥水も浴びるほど飲んできたであろうRHYMESTERが言うからこそ、このメッセージには価値がある。 必聴。