Kan Sano『Ghost Notes』

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「確かに不確か」である面白さ 

 


 日本のキーボーディスト、プロデューサーによる2年5ヶ月ぶり4枚目のフルアルバム。

 


 キーボードが主の流麗なアレンジとウィスパーボイスで、浮遊感やリラックスしたムードを醸し出す。そんな感覚が過去作には見受けられました。ですが前作『k is s』あたりからリズムが前面に押し出されたミックスへと変化しており、今作はその方向性を推し進めた印象があります。様々なフレーズをループさせたヒップホップ的インストナンバーのM5がその最たるものでしょう。歌詞を歌詞として聞き取らせない点も含め、これまで通りBGMとして聞き流すことも可能なグッドミュージックでありながら、より黒人音楽が持つリズムやアクの強さも色濃く打ち出した今作。
 そこへ来ると『Ghost Notes』というタイトルにも合点が行く気がします。どの曲においてもおぼろげに揺れる声。どういった言葉で呼んでも何かしらそこから零れ落ちるであろう音像のジャンルレスさ。「空いてる席に座ったんだなあ」と皮肉の一つも言いたくなるほどのありそうでなかったバランス感はまさしく、この世にいながらこの世ならざるものとしてそこに在る(とされている)幽霊のそれに重なります。