佐々木亮介/Ryosuke Sasaki/LEO『RAINBOW PIZZA』

f:id:HugAllMyF0128:20190907182820j:plain

 

「バンドのフロントマンがやるソロ」を超えて

 

 

 a flood of circleのフロントマン、佐々木亮介によるソロ名義初のフルアルバム。


 佐々木のルーツであるブルースを聖地・メンフィスにて昇華した1stEP『LEO』、トラップを取り入れながらもギターの存在感が色濃かった前作『大脱走E.P / The Great Escape E.P』。音楽性の土台であったりエッセンスの模索であったりとベクトルの違いこそあれ、これまでの作品は「ロックンロールに現代らしさを反映させる」というa flood of circleの存在やスタンスが前提にあったはず。しかし今作はそうした「バンドのフロントマンとして」というアイデンティティから解き放たれたようなグッドミュージック集に仕上がっています。
 Chance the Rapperなどを手掛けるElton Chungとレコーディングしたシカゴでの4曲と、ROTH BART BARONの三船雅也とタッグを組んだ東京での4曲。ビートが主軸のトラックメイクに変わりはありませんが、前者は一音一音がよりタイトに、後者はコーラスやフレーズの残響から空間を感じさせるプロダクションとなっているのが対照的です。そんな本作でこれまでとの違いを大きく感じたのは、「佐々木亮介らしさ」と「現行音楽シーンのエッセンス」とのバランス。以前は前者の要素が強かったところ、今作ではそれが50:50になった感があります。トラップ+フルートというUSヒップホップで象徴的なモチーフを使いながらも日本語やフルートの音階から和を想起させるM3や、クワイアめいたコーラスや震えるボーカルにFrancis and the Lightsを感じさせつつ〈味方でいるぜ〉という歌詞から佐々木亮介らしさを滲ませるM8などは特にそれが顕著で、情報過多にならない絶妙なラインで両者を共存させている印象です。鳴ってはいるもののあくまでビートを引き立てる程度の存在感に落ち着いたギターの立ち位置からも、前作までとは決定的に向いている方向が違うことを感じさせます。
 バンドマンとして、ギタリストとして。そうした種々のテーゼから、本作は完全に解放されたように思います。1人の音楽好きとして興味関心を前面に押し出しつつ、これまでの自分らしさも聴かせる。本作で彼はようやくちゃんと「バンドマンとしての」ではないソロになったのだな、と思いました。振り幅は大きいにも関わらず肩の力を抜いて聴ける良盤。