ヒグチアイ『一声讃歌』

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もうみんな繊細ぶるのやめたら?

 

 

 香川県出身のシンガーソングライターによる、1年3ヶ月ぶり3枚目のフルアルバム。


 傷つけられることに敏感なクセして、平気で悪態をついたりする。都合よくそれとこれとを切り離して、自分の好きを肯定するためだけのロジックを組み立てる。繊細ぶっている人間は自分が気を配れていると思い込んでいるけどそんなことはなくて。むしろ繊細さを証明せんとばかりに、積み上げてきた思想が揺らぐことが怖くて他者を打ち負かそうとする。私だってそうです。
 本作に収められている歌は、絶えずそんな欺瞞を抉り、突き刺し、鼻で笑います。ただしその矛先にはヒグチアイ自身もいて。〈おまえに言ってるんじゃなくて わたしに叫んでるんだよ〉と宣言するM1や名前の無さに居場所の無さを見出してしまう中盤の楽曲群から象徴されるように、誰も大した違いのない卑しい存在であることを突きつけてきます。ラストのM13で一瞬だけ自分を赦すけど、それすら光の入口でしかありません。本作は消えてしまいたくなるほどに重ねた内省や自罰とその先で得た赦し、その2つだけでできています。「音楽に政治を持ち込むな」や「カルチャー顔」に憤って繊細を気取るなら、一度これくらい引きこもってみせろよと思いますね。