SiR『Chasing Summer』

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ちゃんと“ブルース”だった

 

 

 アメリカ、カリフォルニア州出身のラッパーによる1年7ヶ月ぶり3枚目のフルアルバム。


 クレームタグまみれのジャケット、飛行機の絵文字で彩るツイート、パイロットの声に始まりパイロットの声に終わるプロット……明確に本作のコンセプトは「旅」だ。『夏を追いかけて』というタイトルそのまま、SiRは飛行機に飛び乗り旅に出る。しかも行き先は「ここにはない」夏。自らのルーツを尋ねるが如く、本作は要所要所で過去の重要なモチーフに触れていく。
 〈俺は今、先頭に立ってる〉。同郷の盟友であるKendrick Lamarと掛け合うM1が描き出す現在から抜け出し、過去の男女関係や時の無情さなどを甘美ながらどこかドライに切り取っていく。これまで以上にモッタリした輪郭の覚束ないリズムがノスタルジーを加速させる。思い出は時間の経過に伴ってどうしても美化させがちだが、これは凄まじく高い場所まで登り詰めた者だけが持ち得るひと時のバカンスのようなものだろう。それが証拠に、一通りレイドバックし自らを見つめ直した後、彼は愛する者の待つ現在のLAへしっかり舞い戻ってくる。これは正しくリズムアンド “ブルース” 、苦しい環境をサバイブするための正しい姿でしょう。