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Music, BOYS & GIRLS.

Kanye West『Jesus Is King』

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広大な世界に、ただ一人で立っている

 

 アメリカ、イリノイ州シカゴ出身のラッパーによる、1年4ヶ月ぶり9枚目のフルアルバム。
 PS4用ソフト『DEATH STRANDING』をプレイしていると、本作との繋がりをいくつか見出せる。反復を用いて神と繋がらんとするゴスペルの体を取りながらぶつ切りなエディットを繰り返す本作と、『いいね』で繋がる世界を志向しながら他者そのものを直接現出させはしない『DEATH STRANDING』。何かと繋がるために部分的な分断を発生させる手法はとてもよく似ている。そしてそれはとりも直さず、SNS以降における繋がりを写生していると言えるだろう。象徴的なのは途中から再生したかの如く破裂したように始まるゴスペルナンバーM1と、ブリッジ部分で梯子を外すように終わるラストトラックM11。まさに最初からクライマックス。
 しかし今作のポイントは、そのぶつ切り感と同時に『まだ、終わらない』という不安をも現出させる点だ。これもオープンワールドゲームにおいてある程度共通する感覚かもしれない。その舞台を旅していると時折襲ってくる不安感。リリースに至るまで幾度かあった延期を含め、本作にはその感覚も根強い。例えばM2での、快楽というより強迫観念に近い〈Hallelujah〉のリフレイン。M10に登場する、〈このゴスペルを使えよ〉という割にはあまりに頼りなく線の細いKenny Gのサックス。そして何より、次作としてクリスマスにリリースが予定されている『Jesus Is Born』の存在。高揚感と不安。分断と無限。それらが全て綯交ぜになって、たった27分の闇鍋で煮詰まっている。
 自らのウィークポイントや止まない批判へ徹底的に向き合った前作『Ye』を経て、神への救いに手を伸ばした今作までの流れ。それを見るにつけ、私は彼が本当の意味で他者との対話を必要としないフェイズにまで到達してしまったように思う。ポーズとして、神の言葉に導かれたように見せてはいる。しかし実際浮かび上がってくるのは『俺が良しとしたものは良きものである』というメッセージを、私的な意見の域を超えて啓蒙している姿だ。〈みんな『Yandhi』を欲しがってるけど、神様が洗濯してまっさらにしちまったよ〉というM2のラインは、結局〈ここはフレンチレストランなんだろ?急いでクロワッサンを持ってこいよ〉(“I Am A God”)と言い放ったあの頃の雰囲気と重なる。これまでもKanyeは傍若無人だった。だけど本作を作る過程で彼はとうとう、誰の声も届かない『無敵の人』になってしまったのではないか。そんな漠然とした不安が、不完全な高揚感と同時にこちらの身を蝕んでくる1枚。