Best Albums of 2019

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 Apple Musicには2019年から『Replay』という機能が追加されました。年ごとによく聴いた曲をまとめてプレイリストにしてくれたり、それこそ再生回数が多かったアルバムのトップ10をランキング形式で見せてくれたりします。そのデータによると、私は2019年12月31日時点で911時間音楽を聴いているらしく。もう9割9分ほどApple Musicでしか音楽を聴いていないので、数字はそのままストレートに受け取っていいかなと。そうすると、1年のうち約38日を音楽鑑賞にあてている計算になります。多いんだか少ないんだか。また、聴いたアルバムは343枚。もちろんその中には旧譜や1曲のみ収録のシングル、全編通して聴けていないものも含まれるでしょう。それらを除けば、今年リリースのEPおよびフルアルバム合わせて250〜280枚ほどの新譜を耳にした計算になるかな。本日はそのトップ30をランキング形式で紹介します。

 
 30枚並べてみて頭に浮かんだキーワードは『ポップスの拡張』。国内・海外問わず、それまで掛け合わせていなかったものを配合し、まとめ上げた作品にワクワクした気がします。そうして生まれたものは、「根っからのオリジナルではない」と批判を受けることもあるでしょう。だけど、それの何が悪いというのか。組み合わせ次第でまだまだ音楽は面白くなる。年間を通して(割と絶えず)そうした作品と出会えたのは幸福だと、自信を持って言える年でした。

 

 では、これよりランキング開始です。それぞれにちょっとした感想とApple Musicのリンク、当ブログでレヴュー済みの作品にはそちらのリンクも付けました。年始もしばらくはこいつで遊べるハズ!相も変わらずミーハーだけど、これからの時代の音や言葉はもう既に届けられているんだと、30枚を通して聴けば感じられるラインナップだとも思います。
 来年はディケイドが変わって2020年。楽しくやりましょう、きっと苦しいから。

 

 

 

 

30.Toro Y Moi『Outer Peace』

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 どことなくチープでポコポコしたリズムやジュクジュクと短い音を刻み続けるシンセが印象的なM1、コンガを基調にディスコを鳴らすM2など、80s譲りなリズムに重点を置いた感のある本作。その一方でM10の美しくも無機質なピアノの調べからはVaporwaveに似たものを感じたりもする。ノスタルジーに逃避することで、人は安らぎを得られる。『外側にある安寧』とはそういうことなのかも。

  

 

29.NICO Touches the Walls『QUIZMASTER』

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 2017年の『OYSTER -EP-』、2018年の『TWISTER -EP-』とギターの切れ味がどんどん鋭くなり“VIBRIO VULNIFICUS”なんてもはや全部の音が耳に痛いくらいだったのに、ここに来てブルースに回帰。アコギの割合が多くゆったりした大陸的なドラムに乗せて歌われるのは、安直に答えなんて出せないし出すモンじゃないんだって内容ばかり。ひねくれた時期も前向き過ぎた時期も越えて、真摯な表現を掴み取った彼ら。個人的には最高傑作だし、だからこそ〈もうこの星に 君の居場所はあとわずか〉なんて言ってくれるなよと思ってしまった。活動終了、お疲れ様です!

  

 

28.Moment Joon『Immigration EP』

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 〈彼女と手繋いだままデートに行ったるわ 靖国〉〈最後にfuck you 三浦瑠璃〉〈犬食いクソ韓国人にお前らは犬死〉全て本作所収のリリックだ。やるせなさややり切れなさ、もしくはそれ以上の実害を全てリリックに込めていく。ヘイトに次ぐヘイトに抗うため、彼はあえて大きな声で汚い言葉を使う。まるで自らが言われた言葉をそのまま返すかのように。売り言葉に買い言葉という意見もあるだろう。だけどそうせざるを得ないほどにきっと彼は追い詰められている。自身の住所まで晒した本作に、切羽詰まったリアルを感じた。

  

 

27.Camila Cabello『Romance』

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 キューバン・アメリカンとしてのアイデンティティを明確に刻みつけながら現行シーンのトレンドを混ぜ込んでいく作風は今作も健在。コーラスでサブベースが唸るM1、静謐さがありながら実は2拍3連のビートが背骨にあるFinneas O'Connell作曲のM13は特に気持ちいい。コンセプチュアルであるよりもバラエティさを、とでも言いたげな楽曲のバラつき具合も含めて、ルーツであるラテンミュージックへのリプリゼントと他文化へのリスペクトが詰まった1枚。

  

 

26.KREVA『AFTERMIXTAPE』

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 コンセプトから自由になり、パッと作ってパッと出す!なイズムで完成した本作。ある種「J-POPにおけるラップ」を背負っていた向きも感じられる近年の作品とは全然違う。今気になる音や気になる人をトータルバランス度外視で取り入れた本作は結果的に、どこにもないテイストの作品になっているなぁと思います。特にM5はアラビアンな音色とドメスティックなリリックの配合が素晴らしかった。かつ、ここまで早口かつ明確な怒りをぶちまけるのも珍しいなぁと。

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25.赤い公園『消えない - EP』

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 新Vo.石野理子のハキハキと広がる声に引っ張られる形でボトムが太く、逞しくなったような。曲そのものにもどっしりした構成が増え、全体的にグルーヴの強さが増した印象です。歌詞にもそんなタフネスは顔を出しており、言葉遊びの中に滲む本音がこちらの胸まで締め付けてきます。〈こんなところで消えない 消さない〉なんて言われたら泣いちゃうよな。鋭さよりも大らかさが備わった今の赤い公園、どこまででも広がってほしい。

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24.Ama Lou『Ama, who? - EP』

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 ノース・ロンドン出身、20歳のシンガーソングライターによる2枚目のEP。「ヒップホップとR&Bに境目がなくなった」なんてのは何年も前からポップミュージックにおける常識となっていたけど、その2つをここまでシームレスに繋げられると逆に驚くというか。「意識させない」ことに対する意識の高さを感じました。言葉の緩急を巧みに付けながらトラップの海を朗々と泳ぐM2は白眉で、どのタイミングでどこに行き着くのかもわからないのにずっと気持ちいい。このスキルの高さがあってこそ、ピアノ1本で弾き語るM1も映えるというもの。

  

 

23.Lizzo『Cuz I Love You』

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 ボディ・ポジティヴのアイコンとしても象徴的な彼女。てめぇの好む体型じゃないが、それの何が問題なんだ?というある種の開放を象徴するかのように音色が全編通してカラッとしていて、そこがとてもいいです。〈DNA検査したらわかったんだけど、私は100%ビッチだって〉と言い放つM13なんて特にそう。尺の短さも相まって、パワフルなアルバムだしパワフルな歌唱なのにスッと聴き通せる。とてもバランスの取れた作品だなぁと思います。

  

 

22.PETZ『COSMOS』

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 『ポップスの拡張』というキーワードが当ランキングの大まかなキーワードとなっていますが、本作に関してはもうそうした意識すらなくナチュラルな越境を果たしているように思います。日本語・英語・中国語が入り乱れるM5を今年はよく聴きました。ラッパーこそが現代のロックスターである、なんて言説にはピンと来ないし、そもそもロックスターがいた時代に生まれてすらいない私です。だけどこの恐ろしく自然なユニティの形は、かつてロックスターが目指したものと同根なのかもしれないな、と思いました。

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21.The Day『Midnight Parade』

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 オランダとドイツを拠点とするドリームポップデュオのデビューアルバム。今年の始めにリリースされてからしばらくはずっと聴いてました。リバーブのかかったギターに浮遊感あるシンセは確かにドリームポップ〜シューゲイザーの系譜を感じ取れますが、M3あたりはそれにしてはやたらキッチュだし、M7の作り込みには無骨なインディ・ロックの匂いも漂います。そんな感じで、穏やかかつうるさくないグッドミュージックを目一杯吸い込み作り出されたことがわかる良盤。コンスタントなリリースを期待しています。

 

 

20.パブリック娘。『Aquanaut Holiday』

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 とにもかくにも前作『初恋とはなんぞや』とのギャップに驚いた1枚。おふざけだってもちろん交えてはいるけど(M13の酷さには笑ってしまいます)全体的なトーンは暗めで、人が生きていくうえで避けては通れない別れやあの日の自分を思い返す曲のなんと多いことか。あまりにひっそりとリリースされたその状況まで重ね合わせると〈どこでだっていいよ いつか会えたら〉と呟くM10に胸を締め付けられずにはいられません。1人になっても人生は続いていく、そんな残酷な真理を真摯に紡いだ作品。

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19.Charli XCX『Charli』

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 「ライヴの完璧なオープナー」(本人談)ことM1やモロにEDMなビルドアップ/ドロップダウンがもはや懐かしくもある(そしてここにもLizzo!)M8などのアゲていく楽曲群ももちろん素晴らしいのですが、個人的にはM9〜M11のミディアムテンポで聴かせる流れが好きです。1枚の中にアゲもサゲも表現されているのはCamila Cabello『Romance』と同様ですが、パーソナルな内容もあってこちらはより生身の人間を映し出していると思います。

  

 

18.Billie Eilish『WHEN WE ALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』

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 今年に入るまではその名前すら知らなかった彼女。後で昨年のSUMMER SONICに出演していたことがわかって驚いたくらい。そして本作なんですが、これは少しいいスピーカー、もしくはカーステで聴くことを心からお勧めします。それほどまでに低音を強調した作りはもちろん現行シーンのスタンダード。“bad guy”のサブベースでは冗談抜きで鼻腔が震えます。彼女たちがそこに加えたのはゴスの意匠と、それらの暗いイメージと相反するような力強いメッセージ。身を切るような切実さで聴き手を抱擁した彼女のためにも、次は私たちが彼女を抱擁し返す番なんじゃないかと思うのです。本当はヒーローなんて、いない世界の方が望ましいのだから。

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17.ヒグチアイ『一声讃歌』

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 今年の新譜で心から歌詞にぶっ飛ばされたのはMoment Joonとヒグチアイでした。むしろその2組だけだと言ってもいい。両者とも描写の解像度が凄まじく高いのですが、表現技法はまるで異なります。Moment Joonが固有名詞をひたすら並べて怒りを表現するザ・ヒップホップな手法を用いるのに対し、ヒグチアイは一文で情景をスパッと切り取り、その鋭さで聴き手も自らも突き刺していきます。〈どうかそのままで どうかそのままで〉というポジティヴな響きを帯びる言葉が、文脈次第でどうしようもない断絶すら呼び起こすのだと、彼女の歌で初めて知りました。

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16.KIRINJI『cherish』

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 体制変更後、なんだかどんどん変態性が増してる気がするKIRINJI。本作はもはやポップミュージックの枠組みからすら離れているように感じます。トラップにAORが絡み、誰も歌ったことのないような単語を連呼するM3、呑気なトランペットに載せてひたすら〈血を流せ〉と繰り返すM5、かと思えば対立構造を煽るタイトルながらひたすらピザ優勢なM7があったりと、聴き込めば聴き込むほどにどんな感情になったらいいのかわからなくなる1枚。狂ってるように見えるけど、それは果たして彼らなのか、私たちなのか。

 

 

15.Giant Swan『Giant Swan』

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 イギリス、ブリストルのエレクトロニック・デュオによるデビューアルバム。カットアップさせた声と歪みを伴ったキックが全体を通して鳴り響き続けるダークなテクノ、もしくは一種のパンク。四つ打ち好き好きマンとしてはもう、この手のダンスミュージックは最高としか言いようがないです。あまりに細かくカットアップしたためにほとんど断末魔のように聞こえるボイスサンプリングも、この作品の中ではなぜかとても心地よく感じられます。夜中3時くらいに聴きたいですね。

 

 

14. YONA YONA WEEKENDERS『夜とアルバム』

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 NEWTOWNというイベントでVo.G磯野くんの弾き語りパフォーマンスを見て掴まれ、音源はもちろんリリースパーティーにも繰り出してしまいました。呑めないし呑む気も普段はしないのだけど、彼らの音楽を聴いている時だけは「酒、呑みたいな」という気持ちに本当になる。「メロコア経由のグッドミュージック」を自称する彼らのサウンドはそれを感じさせないほど洒脱でグルーヴィ。なんだけど、言葉選びに潜むちょっとしたおふざけは確かに、件のシーンに見受けられる類のものかも。まずはM4だけでいいので聴いて!

 

 

13.the chef cooks me『Feeling』

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 YMO愛に溢れたM3やASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバーM10など、テンションの上がる瞬間はいくつかあります。なのに全体的にはとても静かというか穏やかというか、風邪をひいている時でも邪魔にならず聴き通すことができました。ブラジル・ミナス地方のミュージシャンを聴いているときと同じ気分になったの、今考えても不思議なんですよね……。「ノイズにならない」点が心に残るという、今までにあまりない音楽体験ができた1枚。

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12. ENDRUN『innervision』

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 「ローファイヒップポップ」という言葉も「ビートテープ」という言葉も知ったのは確か今年に入ってから。Chilled Cowが動画で使用した『耳をすませば』のワンシーンよろしく、本作も作業用のBGMとしてとてもしっくりくるんですよね。と同時に本作が凄いのは、ヘビーリスニングにも耐え得る構成になっていること。ヨレたビートやギターの唸り、客演陣のラップやスクラッチスキルの巧みさが絶妙なバランスで配合されているお陰で飽きることなく聴き通せます。上半期に「年間ベストにするほどではないけど」とツイートしてしまったのですが、それは大きな間違いだったなと思うほど強度を持った1枚。

  

 

11.ナードマグネット『透明になったあなたへ』

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 なぜこのタイトルなのか、なぜイントロの始まり方がああなのか、なぜ13曲なのか、その全てに意味がある1枚。詳しくはVo.Gtの須田亮太さんが種々のインタビューで答えているので割愛しますが、そうした1つ1つの要素を紐解けば紐解くほどラストトラックのM13で涙が出てしまいます。前作は私小説としての作品でしたが、本作はストーリーテリングが軸。それにも関わらずこんなに胸を打つのは、本作もやはり喪失について歌っているから。パワーポップの枠にはもう到底収まらない、素晴らしい物語がここにあります。

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10.Post Malone 『Hollywood's Bleeding』

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 『ポップスの拡張』というキーワードを思いついたとき最初に頭に浮かんだのは、本作と1位の作品でした。ネオアコからOzzy Osbourneまでを一緒くたにまとめてぶち込む様はもはや執着と呼べるほど。M6のタイトルおよび〈逃げてみろよ〉というフレーズから象徴されるように彼は音楽(≒CD)全体に執着していて、きっとこれからもそこから離れられない。分断に橋を架ける英雄的行為の極致と狂気が、本作からは同時に伺えます。

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09.Kenmochi Hidefumi『沸騰 沸く ~FOOTWORK~』

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 タイトルの通り、ひたすらにフットワーク!タッタカタッタカ細かく刻まれるリズムの後ろでサブベースが唸り続けるM1からして最高!以上!で話を終わらせてもいいんですけど、よくよく考えたら1つのリズムパターンでアルバム1枚やりきっちゃうって凄くないですか?上モノの音色やBPMをイジるだけでバリエーションがぐんぐん広がって、度重なる視聴に耐え得る作品になる。サラッとやってるように見えるし実際ライヴで観たときも飄々としていたけど、これは奇跡ですよ。

  

 

08.木梨憲武『木梨ファンク ザ・ベスト』

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 恐らくだけど、音楽好きな方でもスルー率が高い気がしてます。いやでもこれ本当名盤ですよ。隆々たるクリエイターが集った本作は『ファンク ザ・ベスト』と銘打ちながら実際はレゲエやヒップホップ調の楽曲があったりもしますが、そのどれもが本気。んで何が凄いってリリックの内容。本当にしょうもないことも歌ってるけど、そのしょうもなさってファンクやR&Bのリリックとして散々綴られてきたこと。つまり、文脈が踏まえられてるワケです。人としては褒められたモンじゃないけど音楽をやらせるととんでもないって人いると思うんですよ。Kanye Westとか。日本にもいました。それも超ど真ん中のエンターテイナーの中に。

  

 

07.KOHH『UNTITLED』

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 M1の〈みんなでひとつ〉とM10の〈全然見た目は違うけど同じ〉。私は同じことを歌っているなぁと思ってます。みんな気分が良いときも悪いときもあるし、生まれれば終わるし、もっと言えば死んでようが心に生き続ける人はいるし、逆もまた然りの存在。そんな有象無象の、そのままなら名前すら与えられない私たちの人生に名前を付けるのは他ならぬ自分自身。彼は私たちの首にかかったロープをほどき、価値は勝手に見出せ、気に入らねえ価値観は蹴散らせとアジテートします。そんな本作が「平らかに成る」時代としての「平成」の終わりに生み出されたのは偶然じゃないのでは。

  

 

06.Tyler, the Creator『IGOR』

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 Odd Future時代から彼の動向を追っている身からすると、随分と遠いところに来たものだなぁという印象。下品さをトロフィーのように掲げた時代は過ぎ去り〈行かないでくれ、俺のせいだ〉(M2)〈俺たちはまだ友達でいられるかな?〉(M12)など、別れや拒絶に対する恐怖を全編にわたって展開した本作。大人になり、自分にとって大切なものや失いたくないものを見つけたからこそのごく個人的な内省。女々しいだなんて言ってくれるな、人を好きになったらそんなもん当たり前だ。

  

 

05.佐々木亮介/Ryosuke Sasaki/LEO『RAINBOW PIZZA』

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 これまでのEPが自らのルーツに根差した方向性だったのに対し、本作は徹底して現行シーン対応。とは言え、これぞ佐々木亮介!なある種のクサさ(褒めてます)もそこここに見え隠れしていて、本作はそのバランスがとても良いです。トラップ+フルートというUSヒップホップで象徴的なモチーフを使いながらも日本語や音階から和を想起させるM3。クワイアめいたコーラスや震えるボーカルにFrancis and the Lightsを感じさせつつ〈味方でいるぜ〉という歌詞から佐々木亮介らしさを滲ませるM8。ともに、情報過多にならない絶妙なラインで最新トレンドと従来の「らしさ」を共存させている印象。今挙げた2曲はマジで最高なので是非。

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04.Kanye West『Jesus Is King』

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 最初からクライマックス。楽曲の途中から録音ボタンを押しているのか、破裂音のように始まるゴスペル。終わりも同様、余韻を残す前にブツっと音が途切れます。情緒だとかワビサビだとかをすっ飛ばしてピークばかりを並べた本作は、「SoundCloudにある楽曲にはフックが無い。バイブスしか無いんだ」と言い放ったPharrell Williamsの発言をトップランナー自らなぞったかの様。コンパクトなことも相まって、Apple Musicの再生回数だけなら第2位でした。政治なんて到底任せちゃいけないけど、ゴスペルという伝統とバイブスのみを抽出する最先端なスタンスを混ぜ合わせた本作の快楽にはどうしたって抗えない。

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03.Kevin Abstract『ARIZONA BABY』

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 すっごく個人的な話になりますが、私は週に数日ランニングをやっております。5kmを30分かかるかかからないかくらいのタイムで走るのですが、本作はそれにピッタリなんですよ。ヒップホップグループ、BLOCKHAMPTONの中心メンバーによるソロアルバムで本作は3枚目。BLOCKHAMPTON本隊と比べて幾分力の抜けた雰囲気でBPMも抑えめなんだけど、緩やかにテンションを上げてくれるのがとても良いです。全曲本当にちょうどいい感じのテンポなんですが、やはりリード曲のM2は何度も聴き返しましたね。

  

 

02.Circa Waves『What's It Like Over There?』

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 サーフな1stにヘヴィな2nd。何かしら一言で括ることのできたこれまでの作品と異なり、本作には安直なラベリングを許さない雰囲気があります。前作同様、リフやアンサンブルの強さで引っ張っていく楽曲もあるにはあるのですが、それ以上に耳を惹くのはピアノやクラップ音などバンド以外の音。ロックバンドの形態は維持しながらもサウンドアプローチそのものはバンドにこだわっていない様子で、とうとう「ポップミュージック」としか形容しえない領域に入ってきたな、とワクワクしています。

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01.UVERworld『UNSER』

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 2020年で結成20周年、メジャーデビュー15周年、本作が10枚目のフルアルバム。前作『TYCOON』から見られた海外シーンとの共鳴は本作でさらに加速。インディR&Bやトラップをがっつりと投入しながら、バンド感も損なっていない。特に驚いたのはM2。機械的なトラップが大サビで生ドラムのそれに取って替わり、もはやどんなビートを奏でているのかわからなくなるカオス具合はどこでも聴いたことのないもの。多くのヒップホップアルバムが陥りがちな、テンションが平板になる感覚は本作にも見られる。だけどここに来て、彼らはまたさらに進化しようとしている。その事実に胸打たれないワケがない。「もしかしたらこのアルバムを聴いて離れてしまう人もいるかもしれない」とまで言い放った彼らの覚悟を、私は受け止めないといけない。ファンクラブ歴10年超の私にとって、本作を1位以外に据える選択肢なんてあり得ませんでした。

  

 

 

peedog Best Albums of 2019

30. Toro Y Moi『Outer Peace』
29. NICO Touches the Walls『QUIZMASTER』
28. Moment Joon『Immigration EP』
27. Camila Cabello『Romance』
26. KREVA『AFTERMIXTAPE』
25. 赤い公園『消えない』
24. Ama Lou『Ama, Who?』
23. Lizzo『Cuz I Love You』
22. PETZ『COSMOS』
21. The Day『Midnight Parade』
20. パブリック娘。『Aquanaut Holiday』
19. Charli XCX『Charli』
18. Billie Eilish『WHEN WE ALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』
17. ヒグチアイ『一声讃歌』
16. KIRINJI『Cherish』
15. Giant Swan『Giant Swan』
14. YONA YONA WEEKENDERS『夜とアルバム』
13. the chef cooks me『Feeling』
12. ENDRUN『innervision』
11. ナードマグネット『透明になったあなたへ』
10. Post Malone『Hollywood's Bleeding』
09. Kenmochi Hidefumi『沸騰 沸く~FOOTWORK~』
08. 木梨憲武『木梨ファンク ザ・ベスト』
07. KOHH『UNTITLED』
06. Tyler, the Creator『IGOR』
05. 佐々木亮介/Ryosuke Sasaki/LEO『RAINBOW PIZZA』
04. Kanye West『Jesus Is King』
03. Kevin Abstract『ARIZONA BABY』
02. Circa Waves『What's It Like Over There?』
01. UVERworld『UNSER』